2人が本棚に入れています
本棚に追加
帰宅と出会いと神様と。
「ただいまー」
家に帰って、荷物を置いた。
「あっつーい!」
「明日も暑いみたいよ~?」
「げっ、勘弁してよー」
キッチンで夕飯の支度をする母親と話してから、私はお風呂場へ行って、シャワーを浴びた。
入浴を終えて、服を着て。髪を拭きながらリビングでテレビをつける。
キッチンに母親はいない。買い忘れを思い出したようで買い物に行ったようだ。
そうメモに書かれていた。
「え、なに!?」
私は思わず叫んだ。
私がテレビのリモコンの電源ボタンを押すと、リモコンの電源ボタンが急に光りだしたのだ。
その光はどんどん大きくなっていく。
私はその光に包まれるようにして、やがて光を見続けていられなくなった。
眩し過ぎて目を瞑る。
「わぁぁぁぁ! ミスったぁぁっ! すまんんんんん!」
声がして、再び目を開けるとそこには、おじさんが立っていた。
辺りを見渡すと、それ以外には何の変化も無いようだった。
私が立っているのは、自分の家のリビング。しかもテレビの前。
「わあああぁぁぁぁぁ!」
私は叫んだ。当然だ。
――え、何? 不法侵入!? いつの間に!? いやいや、そんなことより、通報? 母さんに電話するか?
「ちょっと、落ち着いてくれないか」
おじさん……いや、白髪に白髭。おじいさんだ、うん。
おじいさんの言葉に、真っ白だった頭が冷静になる。
よく見ると、そのおじいさんはちょっと宙に浮いていた。
――浮いてるっ!?
地に足着けずにいるおじいさん。何? もしかして幽霊!? 私、霊感とか無いと思い込んでたんだけど!?
「私は神じゃよ?」
私の心を読んだかのようなタイミング。え、ナニコレ。
「私は君に謝らんといかんことがあるんだが、聞いてくれるか?」
優しいおじいさん――神様の言葉に大分落ち着いていた私は、こくりと頷いて、神様の話を聞くことにした。彼の年老いた見た目と若いお兄さんのような声は噛み合わなくて、現実味が無い。それがまた、そのおじいさんを神だと思わせる雰囲気を作り出していた。
ひとまず、今現在、ここに母親が居なくて良かった。
家には私一人。落ち着いて話も聞けるだろう。
第一、私の家はマンションの七階。不法侵入なんて、玄関の鍵も閉まっているし不可能だ。
あんな一瞬で私の前に現れるのだって不可能だろうし、心を読んでいるかのような会話。宙に浮いてるし、何より、優しそうなおじいさんの格好が、私の想像通りの神様で、私はこのおじいさんが神様だと、ひとまず信じることにした。
最初のコメントを投稿しよう!