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しかし、庭にやって来る猫は他にも居た。ただ縄張りの関係で、これまで庭に現れなかった猫も居た。男は、その猫達にも容赦なく殺鼠剤を混ぜた弁当を与えていった。そして、男の家の庭にはまた死骸が残された。死骸は他の動物に食い荒らされ、次第に土に還ってゆく。しかし、怨みを持った魂だけは、その場に留まり続けた。
苦しみの中で死んだ魂は、徐々に男の家の庭に溜まっていった。白骨の数が増えれば増えるだけ溜まっていった。そうして、それが溜まりに溜まった時、その怨念は形を成す。
形を成した怨念は、男に苦しみを与えようとした。月明かりさえ無い新月の日、苦しみを与えられた魂達は、買い物に出ようとした男に襲い掛かる。
男は、訳の分からない恐怖に襲われた。男は、直ぐに家に入ろうとするが、怨念が集まって出来た異形はそれを許さない。
黒い大きな塊は、不思議な力で男を吹き飛ばした。男は、無様に敷地の外に飛ばされ、低い声を漏らしながら倒れ込む。異形は、男が家に戻れぬよう、その玄関の近くで佇んでいる。
その姿は、炎が揺らめくかの様に形を変え、顔が何処に有るかも良く分からない。ただ、様々な箇所が裂け、そこからは赤い肉と鋭い牙が覗いた。その裂ける場所は定まらず、男を吹き飛ばした力も、生えては消える脚のどれかも分からない。
分からないからこそ、人間は恐怖を覚える。そして、それは男も同じだった。
男は、異形から逃げる為に走った。走って走って、誰かに助けを求めようとした。しかし、男に助けを求められる様な人間は居なかった。男は、走りに走った。その後を、異形は付かず離れずで追い掛ける。
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