あの日のこと

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 二人は自室でソファに並んで座っている。 「ラレイル……さっきの話……」 「あー……まぁ、周りが心配するのも仕方ないよね。王様って大変だよね」 「……」 「でもリジーもオレも悪くないし堂々としていようよ」 「…………他の女性と、子どもを作ってもいいのよ?」 「も~こらっ。リジーちゃんまでそんなこと言う。知ってるでしょ? ……オレはリジー以外の女性は抱けない」  女好きで浮気性と言われるラレイルだったが、意外なことにリジー以外の女性と一線を越えたことはない。本人(いわ)く、リジーのような女性を知っていて他の女性に反応するわけがないとのことである。 「それは……今試したら分からないじゃない。子どもを作るためっていう必要に駆られれば」 「いんや、()たない自信がある」  堂々と宣言する様子に思わずリジーは吹き出した。 「それって自慢すること?」  笑われたことが不本意だったのか、ラレイルは少しむっとしながら答えた。 「そこは喜んで欲しいけど。浮気の心配ゼロだよ?」 「どこからを浮気と言うかによるわね」  その指摘にラレイルの目が泳ぐ。 「あー……ほら、まぁ、付き合いは色々必要だから。でも、リジーっていう最高の女性がいて、他の女性を欲しがるわけないじゃないの」 「よく言うわ」  このやり取りに二人の雰囲気が少し和む。リジーの緊張が解けたことが嬉しくて、ラレイルも自然と頬が緩んだ。 「オレたち、昔っから約束してたでしょ? 父上たちみたいにはなりたくないって」  リジー自身も父親の女性癖には苦労した。彼女にも弟と妹がいるが、二人とも母親が違う。ラレイルと違って彼女の場合兄弟仲はいいが、子どもを作るなら自分たちだけの子どもにしたいと、結婚前にはよく話をしていたものだ。 「それはそうだけど……あの頃は私たちもまだ子どもで、よく分かってなかった。今は状況が違うわ」 「リジー。オレは子どもがただ欲しいってわけじゃない。リジーとの子だから、欲しいと思えるんだ」 「でも、私との子どもがもし、これ以上望めないなら……」 「オレはそれでいいよ。リジーがいて、トアがいて……三人で幸せだよ」 「……」 続けてラレイルはにやっと笑ってこう言った。 「まぁ、オレたちにはバルドルを始めとして口のうるさい使用人たちも沢山付いてくるけどね。さらに国民のことも考えないといけない。三人だけでのんびり、ってわけにはいかないけど、賑やかなのはいいことだよね」 「ふ……なによそれ」  困ったような顔でリジーは笑った。泣きそうになっているのを(こら)えているようにも見える。
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