【短編】約束

現在

「……本当に？」
「こんな嘘、つくわけないでしょ」

　少し強がった口調でそう言いながら、リジーは俯いた。自分の長い髪のおかげで顔を隠せるのが幸いだ。泣きそうな顔を見られたくなかったし、自分の夫、ラレイルがどんな顔をしているか見るのも怖かった。

　少しの沈黙の後、ははっと恥ずかしそうな笑い声と共に、嬉しいなぁと呟く声が聞こえて、リジーは目に涙が込み上げるのを感じた。このまま俯いていても涙がこぼれるのは分かっていたが、それでもまだ顔を上げることができない。

「……おいで」

　次の瞬間、リジーはラレイルの腕の中にいた。こぼれる涙はそのまま彼のシャツに染み込んでいく。

（ああ……あの時もあなたはそう言って私を抱きしめてくれたわね……）

　夫の腕の中で彼女の脳裏に浮かんだのは、若かった頃のある出来事だった。

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