一輪の花が香る日の話

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一香(いちか)日花(にちか)は姉妹である。 2人の顔はよく似ていた。 2人ともとても愛らしい可愛らしい顔をしていた。 特に妹日花(にちか)は 顔が小さく四肢も長い、透けるような白い肌の持ち主だった。 姉の一香(いちか)も同じように透けるような白い肌の持ち主だったが 等身の妙というのか、とにかく顔が大きく手足が短かった。 猫のマンチカンのようで可愛いと本人は卑下する様子もなかったが、 妹はただ顔が小さく四肢が長いだけで、洗練された都会的なイメージが 確立されていた。 人から見ると、比較対象の2人ではあったがとにかく仲が良かった。 「ちょっと、日花っ。私のワンピース着ないでよっ!」 「え? ケチ〜」と言いながら一香にタブレットを見せて 「見て。一香のこのワンピース、表紙になってる。」 2人は顔を寄せ合って。タブレットの画像を覗き込んだ。 画像にはポニーテールの女性が一香と同じワンピースで 躍動的な瞬間を切り取ったようなポーズで元気に笑っている。 「でさ・・このリボン見て。鎖のリボン・・可愛くない?」 言わずもがな、可愛くない?は可愛いよねの意味である。 「ほんとだ! 日花、チェックして教えてよ。」 「O K! ・・でさ!ワンピース貸して?  代わりにさ、このスカート履いていきなよ。」 日花が渡したスカートもまた、若い子に人気のブランドのもので 柔らかい素材のフレアスカートで大柄が真夏の太陽によく映える。 早々、スカートを履いた一香は黙って日花の前に立った。 「・・・。」 「・・・。」 怖いくらい似合わないスカートに2人とも声も出なかった。 「・・・ワンピース・・返すわ・・。」
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