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──下戸だって、たまには溺れるほど飲んでみたい時があるんだ、けれど。
たった数口で体が発汗し、酩酊感を覚えた遼平は上着を脱ぐと、ワイシャツのボタンを外してネクタイを緩め、喘ぐように息を吐いた。
「…は~ぁ」
(ダメだ、こりゃ)
ロング缶でもないのに、一本飲み切る自信がない、と思いながら肩で息をついていると、
「珍しい。 お兄ちゃんがお酒飲んでる」
と言う声と共に妹の美波がキッチンに姿を現わし、遼平は酔いを滲ませる眼差しを向けた。
『女顔だ』と、よく人に揶揄される遼平は、時に、
『双子』
だと間違われるほど、年が近い妹の美波と顔の造形が似ていた。
身長は僅かに違うが、華奢な美波と、ひょろりとした体躯の持ち主である遼平が並び立つと余計にそういった印象を人に与え、
『美人だねぇ』
と言われることがままあった。
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