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しかしである。
そういった『女性らしさ』は、何も言動に限らず、気遣いもできる、実に女らしい『おじさん』だった。
そのため、パートナーを組んでいない若手からも信頼されている先輩で、遼平も他聞に漏れずこの二年、鈴木にはすっかり世話になっていた。
(でも、年を気にしてか力仕事は積極的にしないんだよな)
ディスク回りの整理整頓が得意ではない鈴木が溜め込んだファイルを資料室へまとめて持って行くのは、後輩兼パートナーである遼平の仕事になりつつあった。
今日も朝の軽いミーティングのあと、鈴木が積み上げた資料を両手いっぱいに抱えた遼平は大股で歩きながら、誰にも聞こえない程度のため息を零した。
…昨日はあまりにも唐突だったから、何も言わずに帰ってしまったけれど。
『付き合わないか』
と言われたことを、遼平はあれから何度も反芻することで、理解した。
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