森に還る

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朝。夢から覚める。時々泣いている。 夢の中で、懐かしい人の声でも聞いたのかもしれない。 ふらっと寄りかかるようにして、リビングの戸を開ける。 「おはよう……」「おはよう」 寝ぼけた声に、返事があった。 見れば彼が朝から床で一杯やっていた。 「何を」 「部屋を追い出されたから、しばらく泊めてくれ」 なんて、けろっとして言う。そう、この適当な友人は案外モテる。それもほんの一瞬だけ。それを良いことに、あの日からとっかえひっかえしていた。 「……別にいいけど」 ご飯係として期待されているのは分かっているのに、つい気を許してしまうのは、彼が彼女のことを人間扱いしてくれるからか。 彼が本当の本当に僕の大切な人になってしまうことが、今は少し怖い。 *** 三年と半年が経つ頃。彼女から初めてつぼみが出来た。丸いつぼみが。 それまでコミュニケーションは、僕から一方的に話しかけるばかりだったから、まるで彼女から返事をもらったようで僕は嬉しかった。 こんな世界になっても、まだ希望はある。 どんな色の花が咲くのか、今から楽しみで仕方がない。
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