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あの日を境に、連絡の取れなくなった友人が数人いる。
実家の母の元に、父が帰ってくることもなかった。
彼らはこの町のどこかで、木になっているのだろう。
木になった人々の区別は付かなかったが、誰もが誰かの大切な人だったのだ。木を切ってしまおうなどという話が出ることはなく、みんなこの森と生きていくことを選んだ。
木になった人たちに、今も感情が残っているかは定かではない。普通の植物たちと同じく、彼らとコミュニケーションを取ることは出来ない。
ただ、風に吹かれてさやさやと鳴る葉の音は、いつも優しい。優しくて時々もの悲しい。
僕たちがいなくなった人たちを思うのと同じように、彼らも残してしまった人たちを思うことがあるのかもしれない。
僕は。
僕はあの日、彼女をなくしたと言えるのだろうか。
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