森に還る

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二人分の食事を作るほど、僕は病んではいない。 ただ、テーブルで彼女と向き合って食事をとるとき、涙が止まらなくなることがある。 あの日、日常が終わることを予想できた人はいない。 いるもんか。 そうやって励ましてくれた友人は去年、行方不明になってしまった。元人間の木になる実を、自ら口にする人は決して少なくないと聞く。 斯くして町から人は消え、森はどんどん賑やかになる。 これは同胞ばかりを(かえり)み、他の命をないがしろにした人類への罰なのだろうか。
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