森に還る

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床にひっくり返って目が覚める。 本当に無様な朝。 こんな世界になって良かったことは、朝鳥の声で自然と目が覚めること。人が増えすぎたことで減った命は、人が減ったことでまた増えたのだろう。そして帳尻は合わされた。 朝一から吸い込む空気は、昔と比べて遙かに澄んで美味しい。酒に酔いつぶされた朝なら、尚更そう感じる。空気が美味しいなんて三年前は、思ったりすることはなかった。 「……おはよう」 それでも以前の世界が、僕は恋しい。 「これまで人間主体の世界だったことが、そもそもおかしい」 僕の用意した朝食を食べながら、遅く起きた彼は偉そうに(のたま)う。 昔からそんな持論を持ち出すところが鼻につくと、周囲から遠ざけられていた彼だが、こんな世界になってみると、彼の話も少しは頷ける気がした。 「ガイア理論って知ってるか? 地球を一つの生き物と見なす考え。これによると人類は、地球にとってただのガン細胞だ」 知ってはいる。理解も出来る。だけど余りに虚しすぎて、僕はその考えを好きになれない。 「さて」 お腹を満たした彼から、少し散歩に出ないかと誘われた。僕の仕事は休みだったし、断る理由は特になかった。
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