あー、あの日の わいの冒険 2年生 その4「夏生、暗闇克服の特訓再び」

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「やったー、当たった!」  夏休みが始まるちょっと前、汗ダラダラの学校帰り。マンションのエレベーターホール。背伸びして集合ポストから自分の家の郵便物を取るとそれが落ちた。1枚のハガキに「当選!」の赤い文字。  わい2年生やからまだ「当選」の漢字は読めへんかったけど、赤い文字とニッコリマークのおかげで、これは当たりやってすぐに分かったで。それは、少し前に母ちゃんにお願いして申し込んだ「作って泊まろうダンボールハウス」というイベントだった。このイベントは、タイトルどおり、段ボールで家を作って、その作った段ボールの家の中で一晩泊まるというイベントで、毎年、六甲山の上のスキー場で行われていた。  家に飛び込んで母ちゃんに報告する。   「母ちゃん、当たったでー! ジャーン!!」  と言ってハガキを見せる。 「あら、よかったねー」 「去年はハズレやったからな。今年こそは!って、わいの気合い全部入れて、ハガキポストに出したから」 「たまには、それぐらい気合い入れて勉強し」 「嫌や、そんなところで気合い減らしたくないわ」 「でも、それ行きたかったら夏休みの宿題、早めにちゃんとやりや。やってへんかったら行かさへんよ」 「えーー、なんでーーー」  母ちゃんはよく、全く関係ないのに、何かにつけてわいの好きなもんに勉強や宿題を結びつけてくる。 「だって、なっちゃん、去年も夏休みの終わりに慌ててドタバタ宿題やってたでしょ」 「そやけど」 「早く終わらしたら、後はゆっくり遊べるで」 「そやけど」 「だけら今年は、それ行く前に終わらしてまい」 「……そやけど」  わいも母ちゃんの言ってる事は分かる。それにやる気がない訳やないんや、でも、でも、でもなんやなーこれが…… 夏休み始まってすぐなんて宿題やる気にならへん。そして、何かをじっと待ってるんや、わいは。じっと。じっと。じっーーーと。  大人になった今思うと、そう、機が熟すのをじっと待っとったんや。だから、夏休み始めに宿題なんかできへんわ。  でも、まあ、結局、機は熟さず、結局締め切りにお尻を叩かれて、母ちゃんに怒られてやる羽目になるんやけどな…… あ、大人になった今も、この癖治ってないなー…… (もう今日妄コン締め切りやん……)  いやいや、そんな事ないで機が熟すのをじっくり待っとるんやで。うん、そうやで。決してサボってる訳やないで。そう言うことにしとこ。
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