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青空レイミー!
「非常に困ったことになった」
ずずーん、と僕たちのリーダーは沈んた顔でのたまった。
「最近クレームが来るようになってしまった……練習煩いって」
「音楽室なのに!?」
「音楽室でも遅い時間まで爆音鳴らしてたらやっぱり駄目だったんだと思われる!オーマイガー!」
時代錯誤の、金髪リーゼントスタイル――で何故かギターをやっている我らがリーダー、タクマ。彼は頭を抱えて、大袈裟に床に突っ伏したのだった。その拍子に上着とシャツがせりあがり、もろにお尻から真っ赤なボクサーパンツが見えていることは教えてあげるべきなのか。
ギターでリーダーのタクマ。
ベースのルカ。
ドラムのソージロー。
そして、キーボード兼ボーカルの僕、リチ。
四人でバンドをするため、軽音同好会を結成してどれくらいの時が流れたか。バンド名は、青空レイミー。なんでそういう名前になったのか、由来は全然覚えてない(確か、フケ顔のタクマがジュースと間違えて甘いお酒を買ってきてしまい、酔っ払った拍子につけたとかそんなしょうもない理由だった気がする)。ただ字面はいいし、雰囲気も爽やかなので結構気に入ってはいる。問題は――バンドを結成したのに、ちっとも自分達のオリジナル曲が完成しないことであったのだが。
高校卒業までに、なんとしてでも一曲完成させようと約束した。有名なビジュアルバンドの曲とかを演奏する方が盛り上がるのはわかっているが、やっぱり青空レイミーだけの一曲が欲しいのだ。
そのため、僕達は毎日のように練習しつつ、新曲作りに取り組んできたのたが。
「曲作りって、想像以上に難しかったのね」
ルカが白紙の譜面をぺらぺらと振りながら言った。
「まあ、私みたいにオタマジャクシ読めない人間は最初から作曲なんて無理なんだけどねー。あっはっは」
「それでベース出来てるお前もすごいけどな」
「弾くのはできるのよ、聞けば覚えるもん」
「さいでっか」
バンドやってる人間の全員が、楽譜が読めるとは限らないというのが不思議な話である。というのも、ルカみたいに音を聞けば覚えられるというある意味天才肌の人間もいるからだ。ただし、音痴なので歌うことはできないのだが。
なお、自分達のリーダーであるタクマも楽譜読めない人間であったりする。最近の作曲は、楽譜読めない人でも鼻歌を書き起こすことで出来たりするのだが――いかんせん、楽譜読めないコンビはどっちも音痴で、頭に浮かんだ音をきちんと声に出せない人間だった。
まあようするに。作詞はともかく、作曲は僕とソージローでやるしかないのである。特にソージローはリズム感抜群なので、アドバイスを貰うことも少なくないのだ。
問題は。作詞のイメージも湧いてないのに、作曲がいきなり出来るほど僕達が器用ではないということで。
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