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その年も、僕達は普通にじいちゃんの家に泊まりに来ていた。お母さんと、ソラ君の母親でありお母さんのお姉さんでもある郁子伯母さんの仲が極めて良好だったというのもあるだろう。なんとなく、毎年誘い合わせて夏休みの同じ時期にじいちゃんの家に集合しているんだろうな、というのはわかっていた。郁子伯母さんが地元の専業主婦で、時間を都合しやすいというのもあったのだろう。
毎年のように、僕はじいちゃんの家だとソラ君と一緒に寝る。お互い僕達は一人っ子。仲も良かったし、本当の兄弟みたいな関係だった。夜遅くまでこっそり起きていて、二人でお喋りをしたり遊んだりということもままある関係だったというわけである。――まあ、一つ年上のはずなのにソラ君が結構な怖がりで、夜中にじいちゃんの家でトイレに起きる勇気がなかったから付き合っていたというのもあるのだが。
そう、だからその日の夜も。用件はそれだとばかり思っていたのである。
「なあ、なあクウ。なあってば」
「……あー?ソラ君、なに?またトイレ?そろそろ一人で行けるようになりなよお、もう高学年だろー」
「そ、そうじゃなくて!」
壁の時計を見ると、深夜の二時。当然、窓の外も部屋も真っ暗な状態だ。
ちなみに、僕達が寝ているのは三階。いつも同じ部屋をあてがわれるのが決まりだった。
「なあ、天井に穴あいてるの、気づいてた?」
「ん?」
「あそこ」
その日のソラ君は、いつもよりかなり焦っている印象だった。よっぽどトイレがせっぱつまってるのかと思ったら、別の理由であったらしい。
月明かりでうっすら青く見える部屋の中。僕を起こしたソラ君は、天井の木目の一部を指さしたのである。
彼が指さす先には、木目の丸い模様があった。きっと枝でも生えてた場所なんだろうなあ、くらいにしか認識せず放置していたのだが――ソラ君いわく、あれは木目ではなく穴があいているのだというのだ。
「え、穴なのあれ?てっきり……」
「しっ……」
ソラ君はしー、と人差し指を立てて告げると、その穴?らしきものをじっと見つめて言ったのだ。
「さっきなんとなく目が覚めちまって、天井見たらさ。……あの黒い穴から、誰かがこっち覗いてんのが見えたんだよ」
「はあ!?だ、だってこの上って」
「じいちゃんが入るな、つってた四階じゃん?……だ、誰かいるのかなって……怖くなって」
怖くなって、とは言うが。どうやら半分は好奇心を刺激された形であったらしい。僕に一緒についてきて、四階を確認してほしいと言い出したのだ。
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