やくそく、やくそく。

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 流石に僕は渋った。じいちゃんがあれだけ、毎年のように四階に行くなと言うのである。老朽化しているのなら事故に繋がりかねないし、何より破ったのがバレたらなんて叱られるかわかったものではない。優しいじいちゃんが、カミナリ様のように怒ってきたらちょっと立ち直れる自信がなかったのだ。  しかし、ソラ君は譲らなかった。また覗かれるかもしれない、正体もわからないままじゃ眠れないと言うのだ。臆病なくせに、変なところで強情っぱりなソラ君である。こうなっては、僕も逆らうことはできなかった。 「そんなに怖いなら、ママのところに行って一緒に寝かせてもらいなよ」 「や、やだよ!俺もう五年生になったんだぞ!こーがくねんだぞ!」 「……一つ年下の従弟にしがみついてる奴が何を言う……」  呆れ果てたが、仕方ない。これも弟分のつとめと、僕は彼の冒険に付き合うことにしたのだった。  ちなみに、トイレに行くには廊下を出て、階段の向こうまで歩いて行かないといけない。廊下は暗いので、僕達はいつも懐中電灯を借りて枕元に置いていた。今日の目的地はトイレではないが、やっぱり月明かりだけでは心もとないのも事実。いつものように懐中電灯を片手に廊下に出て、上ったことのない四階への階段を上ってみることにしたのだった。  古い日本家屋を改装した建物である。廊下も階段も板張りで、少し踏み込むたびにぎし、ぎし、となかなか大きな音がする。幸い両親が寝ているのは二階だし、この日はお客さんも三階には泊まっていない。ちょっと歩くだけでは“煩い”と叱られることはないと思われた。そもそも、僕とソラ君が夜中に連れションをするのは珍しいことでもなんでもない。  なお、ソラ君はその間ずっと僕の腕にしがみついていた。僕よりちょっとだけ背も大きいのに、なんとも情けない兄貴分である。 「え」  踊り場まで上がったところで、僕は眼を見開いた。踊り場の上には、普通に四階の廊下があるとばかり思っていたからである。  しかし、階段の上にあったのは木製のドア。しかも、いくつも南京錠がぶら下がっているではないか。 「何だよ、鍵かかってて入れないんじゃん」  最初はそう思って、ついついそのまま口にした――のだが。ちょっと階段を上がってよく見てみると、その南京錠は不自然にぶら下がってずり落ちそうになっているのである。  つまり、鍵があいていたのだ。 「あれ、開いてる?意味ないじゃん」 「う、うん」  僕の腕にぎゅっとしがみつきながら、ソラ君は言う。 「こんなところにドアがあるのもなんか変だけど、南京錠で鍵かけるってよっぽど、だよな?なんか、この先に大事なものでもあるのかな。そ、それこそお化けを封印してあるとか」 「ソラ君、ホラー映画見すぎ。そういうのって、大抵お札で封印してあるもんだけど、お札とかはないだろ」
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