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夜が明ける。昇りたての太陽が海を照らす。さっきまで青白い光をまとっていた波は赤く、不気味に濁っていた。私たちの関係はそういうものだったのかも知れない。
ふたりで過ごす時間は満ち足りていて美しいと感じていたけれど、いざ目を覚ましてみれば酸素の足りない赤潮の中でもがいているだけだったように思える。
朝の澄んだ風がターコイズのティーシャツの中に入りこむ。よれた部屋着のまま出てきてしまったことに気づきはっとする。でも、こんな早朝に人はいない。それに誰かいたとしても私の服装に文句を言われる筋合いなんてない。
今日は休みだ。どうやって過ごそうか。たまには映画館にに行くのも悪くない。冷房の効いたスクリーンで、甘ったるい恋愛ものでも観てやろうか。そんなことを考えていたら胸がどきどきしてきた。とりあえずうちへ帰ろう。適当にパンでも食べて、ちょうどいい時間までゲームをしよう。
思わず私は小さく笑う。軽い足取りで夜明けの海岸を蹴り上げた。
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