ノクチルカ

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 直人と別れて今日でちょうど一週間。体調はすこぶる良かった。現在、午前四時を過ぎたところ。空はまだ深い色をしている。今までならこんな時間に出歩くなんてできなかった。目を閉じて深呼吸をする。静かな波の音と海の香りが体の奥に沈んでいた澱を追い出す。塩を含んだ熱気が肌に貼りつくし、砂浜は地面が逃げていくみたいで歩きにくいけど、心地良かった。  紺色の水平線に目をやると、空には半分欠けた月が寂しげに浮かんでいて、光の道を作っている。その周りは波が揺れるたびに青い光を放ったいた。まるで、こっちにおいでと手招きするように。その光はノクチルカ――夜光虫だった。
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