夏の夜の公園

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 私と姉は仲が良いほうだ。  ご飯にも行くし、こうして電話もする。  今日もこうして出勤前の姉と電話しているのだが……深刻な悩みがあったので私は姉にぶつけてみた。 「やばいよ姉ちゃん……マジで体重が減らない」  個人的には一大事レベルの相談だったのに、電話越しから姉ちゃんの吹き出した声が聞こえた。  仕事を辞めて早半年。  文筆業をメインに行うことにしたはいいが、以前より運動量がガクンと減ってしまった。  そのせいで肩こりもひどいし、腰も痛い。そして体重も減らない。  筋肉が減っているのも嫌というほど実感しているし、このままじゃ身を滅ぼすというのもわかる。 「じゃあ、運動しなよ」 「皆まで言うな……」  姉にキッパリ言われるが、答えはすでに自分の中にあった。  運動不足。それが全ての原因だ。 「でも、体がガタきてるなら相当だよ? ウォーキングからでもやりなさい」 「うっ……はーい……」  姉に命令口調で言われると、どうも逆らうことができなかった。 「姉ちゃんの言うことは絶対」  歳が七つも離れていることを良いことに、幼少期からそう刷り込まれていたせいだ。 「いい? 毎日二十分はウォーキングすること。わかった?」 「わかりました……わかりましたよ……」  渋々そう返すと姉は「よし」と力強くうなずいた。  ああ、これは逐一報告しなければいけない奴だ。  諦めと同時に自然とため息が出た。  しかし、今は真夏。  北海道の夏は本州に比べて涼しくても、日差しが強いのは変わりない。何より、肌を焼きたくない。 「――ということで、夜にウォーキングをしようと思います」  私は旦那に宣誓するが、旦那は良い顔をしなかった。 「そんな夜に出歩いて大丈夫?」 「大丈夫、大丈夫。車通りがあるところに行くし、家の周りを一周するだけだから」  と、私は心配そうな旦那をよそにラフな格好で外を出た。  一歩外に出ただけで、これは正解だと思った。  人通りも少なくてウォーキングしていても気恥ずかしくないし、何よりも涼しい。  試しに十分くらい歩いてみるが、汗をかいても夏の涼風がいい感じに体を冷やしてくれた。  この心地よさのおかげで最初は十分少々だった散歩も、十五分、二十分とどんどん時間が伸びていった。  この涼しさが却ってやみつきになっていたのだ。  夜の散歩が日課になっていたある日のこと。  少し遠出をしていた私は、休憩がてら近くの公園に立ち寄った。  私は近くのベンチに座って公園を見回した。  素敵な公園だった。  遊具も豊富だし、遊ぶ子供たちを見守れる東屋もある。  それに生い茂った木々が日陰になって昼間でも涼しそうだ。  きっと、昼間は子供たちの明るい声が絶え止まないんだろうな。  そんな想像をしながら、私は静かに風の声を聞いていた。  ――その時だ。
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