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 気が付くと、1人でベッドの上にいた。手の平に当たる冷たいシーツをするすると撫でて、雨の音を聞いた。全く、よく降る。  起き上がろうとして、視界がぐにゃりと回って、また力を抜いた。シーツをするすると撫でていると、雨音が止んだ。  誰かが近付いてくる。 「起きたのか? 水、飲みなさい」  白いバスローブを羽織った男性が、ミネラルウォーターのペットボトルを薫の頬にぴとりと当てた。 「誰だよ、あんた……雨は?」 「は? しょうがない奴だな。俺はさっきの店でお前にナンパされた、櫻井だ。雨なら、まだ降ってる」 「雲の上は降ってないんだろ」 「そうだな。雨は、雲が降らせるからな」 「じゃあ、快適なフライトだ」 「ほら、水。……しょうがないな」  寝転んだままの薫を見下ろした櫻井は、ベッドの端に腰かけた。  ペットボトルの蓋をカチリと捻り、自身の口にその中身を含む。そして薫の頭を持ち上げると唇を重ね、ゆっくりと水を流し込んだ。 「ん」  入ってきた水を、こくりと飲む。  櫻井は2度、水を含ませて、3度目に舌を入れてきた。 「………」  分厚い舌は、英司のそれじゃない。  閉じた目尻から、ぽろりと涙が零れた。 「本城君、下の名前は?」 「……薫」 「──薫。いいことしようか」  覆い被さる体の重みは、英司のそれじゃない。  英司は今頃、雲の上だ。  薫の涙を、櫻井が慰めるように優しく舐めた。 「ほら、口、開けて」 「………」  櫻井の分厚い舌が、入ってくる。妙に甘く感じるのは、さっきまで飲んでいた酒のせいかもしれない。英司とは、違う味だ。  唇を這わせながら首筋に移動した櫻井の頭に、手を伸ばす。風呂上がりの、しっとりとした髪が指を滑った。頭皮をまさぐると、くすぐったそうに首を少し竦めたのが分かった。  ほとんどはだけていたシャツの最後のボタンを外して脱がされると、今更ながら、下はスラックスも穿いていなくて下着1枚だったことに気付いた。 「いい体してるねぇ。何かやってたの?」 「……バスケ」  薫の引き締まった体を、英司はよく羨ましがっていた。一緒にジムに通ったりもした。  あのジムも、もう行かないだろう。解約してロッカーの荷物を処分しなければ。  櫻井の手が薫の脇腹を撫でながら、唇が胸の尖りを捉えた。 「………」  カリカリと囓られて、電気のような痺れが走る。ああ、やっぱり相手は誰だっていいのだ。 「……気持ち、いい」 「乳首好きなの? ほら、もうこんなになってる」  櫻井に下着の上からするすると撫でられ、自身が勃ち上がっていることに気付く。  もう、どうでもいい。 「脱がすよ」  薫が腰を上げると、下着を一気に抜き取られた。
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