私の初恋

3/6
72人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
花火大会の会場から自宅までは、約3㎞。 普段なら自転車で移動する距離だけど、今日は浴衣だから、それもできなくてみんなで待ち合わせて歩いて来た。 男子6人女子5人の元クラスメイト。 はっきり言って、男子とはあまり話したことはない。 幼稚園の頃から仲良しだった未来(みく)がクラスのリーダー的存在だったから、普段目立たない私も誘われて一緒に出かけたりするけど、それでもやっぱり私は後ろからついていくのが精一杯で…… だって、周りの子たちはみんな明るくて話し上手な子ばかりなんだもん。 だから、私が1人はぐれても、みんな気づかない。 普段から、私の声をあまり聞いてないから。 私は、不安な気持ちを拭いきれないまま、家路を急ぐ。 下駄の音をさせ、浴衣の裾を一歩歩くたびにハタハタとめくらせながら、裏路地を歩いていく。 すると…… 「(まどか)ちゃん!」 前から、浴衣姿の男性が駆けてくる。 「長田(おさだ)くん!」 浴衣なのに、下駄で裾を捲り上げんばかりに息を切らせて走って来たのは、さっきの同級生グループにいた長田 智樹(おさだ ともき)くん。 中学3年生の時の後期クラス委員長だった子。 「(まどか)ちゃん、いないから、心配したよ。みんなに聞いても、いつからいないか分かんないって言うし」 なんで……? 私がいなくなっても誰も気づかないと思ってた。 「何回電話しても出ないし」 えっ?電話? 私は、慌ててバッグを開けてスマホを取り出す。 未来からも長田くんからも着信履歴があった。 LINEも届いている。 「あ、ごめんなさい。気づかなくて」 裏通りとはいえ、この人の多さ。 人の声のざわめきに加え、一本向こうの通りの車の音も混ざって、夜なのに賑やかだ。 「とりあえず、みんなにはLINEしとく」 長田くんがスマホ片手にLINEするから、私も慌ててみんなとのグループLINEに謝罪のメールを送る。 私が送るのと入れ違いに届いた長田くんのLINE。 『(まどか)ちゃん、発見!  俺が送ってくから、  みんな先帰ってていいよ』
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!