私の初恋

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え? 私は驚いて顔を上げ、私より頭をひとつ高い長田くんを見上げる。 「さ、円ちゃん、行こ」 そう言って、長田くんは左手を差し出した。 握手……じゃないよね? 私は、どうしていいか分からなくて、その手を見つめる。 すると、長田くんは、少し前屈みになって、私の右手を握った。 「これではぐれないだろ?」 え、いや、あ、そう……だけど…… 男子と手を繋いだことがない私は、右半身が硬直してどうすることもできない。 「ほら、帰ろ」 そう言った長田くんは、私の手を引いてゆっくりと歩き出す。歩き出すけど…… 「あ、でも、長田くん、うちとは方向が違うよね!」 隣の小学校区だった長田くんは、中学を挟んで、うちとは反対の方角だったはず。 「私、1人でも帰れるから」 ほんとは夜道を1人で帰るなんて、怖くて仕方ないけれど、でも、わざわざ長田くんに遠回りしてもらうのは申し訳ない。 本来なら、家が近所の未来(みく)と帰るはずだったのに。 けれど…… 「何言ってんの? 円ちゃんを1人で帰して、なんかあったら、俺、一生後悔しなきゃいけないじゃん。帰り道、ずっと、大丈夫かな?って心配しなきゃいけないし。大した距離じゃないから、つまんない遠慮するなよ」 そう言うと、長田くんは、いつもの優しい笑みを浮かべる。 いい……のかな? 私は、気になりながらも、それ以上、断ることも出来ず、歩き始めた。 「円ちゃん、高校はどう?」 長田くんは、いつも他の子にしているのと同じように、明るく話しかけてくれる。 「うん、だいぶ慣れたよ」 取り止めのない世間話。 長田くんとこんな風に話すのは初めてかも。 「かっこいいやつはいる?」 くすっ。 かっこいいって。 「何を基準にそう言うのかは分かんないけど、多分いるんじゃない? 何組の誰々がかっこいいって噂はよく聞くから」 高1女子が集まれば、やっぱり話題はそう言う話になる。 「円ちゃんは?」 ん? 何を聞かれてるのか分からなくて、私は首をかしげる。 「円ちゃんから見て、かっこいいと思う男子はいるの?」 …… なんて答えていいのか分かんない。 「そういうの、よく分かんなくて。変なのかな?」 みんながそういう話をしてても今一盛り上がれない。 男子が嫌いなわけじゃない。 でも、男の子を好きになるってどういうことなのかよく分からなくて、いつもあいまいに微笑んでうなずいてることしかできない。 すると、繋いでる長田くんの手にキュッと力がこもった気がした。 「いや、きっと円ちゃんは、これから好きな人ができるんだよ。相手は分かんないけど」 長田くん…… 私は、隣りを並んで歩く長田くんを見上げる。 けれど、真っ直ぐ前を向いたままの長田くんと目が合うことはなくて……
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