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オープニング
真っ暗闇、どこまでが陸地でどこからか水平線なのかわからない。
曇り空は星さえも出ていないから、波の音だけがザップ―ンと聞こえるだけで怖いものがある。
「お、風が出てきた」
「星、海―!」
野郎ばかりのワゴン車の中が一気に賑わう。
ゴン、ゴン、ゴン。
窓を叩く音に、スイッチを押した。
むっとした風がエアコンの風を押していく。
それと同時にドカドカとものすごい音楽が入り込んできた。
「時間だ、用意しろ」
マネージャーのいやそうな声。
虫が多くてかなわねえといっている。
虫よけ、スプレー!
車から出ると速攻でまき散らし、汗で濡れたTシャツが薬臭くなるまでかけた。
「二年ぶり」
「彼女来るかねー?」
「さああな」
「いいんじゃないの?海外にファンができたんだし」
まあな。
俺達五人は並んで、二年前、ここであったことを思い出していた。
「リハーサル始めまーす」
「行きますか?」
「軽く流すよ」
俺達はステージへと向かった。
運命の出会いなんて、その後があるから言えることで、出会わなければ運命なんて思わない。
一期一会のように、出会ってさようならじゃ運命なんて言わねーし。
次がある、明日がある、たどり着けない未来に絶望するより、明日が絶対来るという未来の方が運命的、言葉じゃなー。
運命ねー。
俺達はここである女の子と出会った、それはまるで花火のように、はかなく消える、何気ない日常のエピソードだったとおもう。
でもそれは、俺の中で何かを動かした。
その後すぐに新曲ができた。
あんまりうまくもない詩ができた、けど俺の今の気持ちと言ったら、みんなに褒められた。
「よろしくお願いしまーす」
♪波に打ち寄せられた、青いガラス瓶。
文字は滲んでいたけど、これだけは分かった。君の名前と、届けと書かれた打ち上げ花火!
あの日、君が見たいと言った花火はすぐに散って行っちゃったけど、この胸に咲いた花火は君に出会えるまで咲き続ける。
あの日、君が書いた砂浜の文字は足元からすぐに消えて行ったけど。
この思い君に出会えるまでは胸の中に書き留めておくから。
海のブルーに溶ける君の金髪が好きだった。
一目ぼれして夜も眠れない!
運命の出会いなんて、その後、出会ったから言えることで。
たどり着けない未来に絶望するより、明日は絶対やって来る、それこそ運命的じゃないのか?
ガラス瓶の中、俺の思い、どうか届いてくれますようにと、海に投げ入れた。
あ・が・れ!上がれ!上がれマインスター!
また会いたい、あって抱きしめたい。
の・ぼ・れ!のぼれ登れ空高く!
三尺の恋花、君に届け!
DON!♪
季節は廻ってくる。都会のど真ん中にある俺たちの会社は車と建物の間を行き来するだけで冷房と、高熱に体の温度変化がついて行かず、おかしくなりそうだ。
夏のイベントは予定表を真っ黒にしていたのが懐かしい。
やっとだな。
ここまでこれたのは俺たちだけじゃ無理だった。
そこには家族、そして応援してくれるファンがいてこそだというのを、彼女は教えてくれたんだ。
あの夏の夜のことを、俺達は忘れちゃいけないんだ。
詩は、俺の恋心に合わせたけど、彼女は受け止めてくれた。
亡くなった母親との約束に抱きしめられて…。
♪ガラス瓶の中、二人の思い、どうか届いてくれますようにと、海に投げ入れた。
あ・が・れ!上がれ!上がれマインスター!
また会いたい、あって抱きしめたい。
の・ぼ・れ!のぼれ登れ空高く!
この、どでかい一発!君に届け!
の・ぼ・れ!のぼれ登れ空高く!
三尺の恋花、君に届け!
DON!
出来た歌は届けとばかりに、夏の夜空に俺たちは全身是令でぶつけていた。
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