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第六話
また季節は廻ってきた。都会のど真ん中にある俺たちの会社は車と建物の間を行き来するだけで体が温度変化になれなくておかしくなりそうだ。
夏のイベントは予定表を真っ黒にしていた。
「またそれ見てるのか?」
俺はもらってきていた空き瓶を見ていた。
洗ってきれいにして並べてあるのに誰かが造花を挿していた。
「今年もやるのか?ロケット花火」
やる!
「おこられるんべーさ」
お前らが言わなきゃいい。
今年のサマフェスは場所が変わった。
まあ、人がすごいからな、やる場所もイベント会社も大変だわ。
肩を叩かれどきりとした、マネージャー、聞こえてねえだろうな?
「誠二、手紙みておけよ」
ゆび指した先にある段ボール箱
ヘイ、ヘイ、ファンは大事にねー。
いちばん上には、ファンらしからぬ、海外からの手紙、封を開けると便箋と写真がバラバラと落ちてきた。
「すげーエッフェル塔だ!」
「おい、これ?」
「あ、あの子だ?」
奪い返すように写真を取り上げた。
「やば?女子力半端ねえ?」
何、何?
よかったな、と肩を叩かれた。
「あ、アルバム?」
買ってくれたんだ・・・。
海で助けた時はタンクトップにステテコ姿、足元には魚サンだったからてっきり男の子だと思っていた。ただ何となく胸のふくらみがあったから女の子だと思っていたんだけどな。
花柄のワンピース姿に、金色の髪がなびいている写真。
やっぱりかわいいな。
そして、俺は手紙を読み始めた。
「なんて書いてあるんだ?」
と後ろから抱き着いてきたリーダーロクちゃん。
「お、お前、泣いてんの?」
読め!とそれを渡した、俺はティッシュを大量にとると、涙を拭いて鼻をかんだ。
何々とリーダーか声を出して読み始めた。
Fromm誠二、SNBの皆さんお元気ですか?
夏の花火最高でした、ありがとう。
彼女の手紙には、あのメッセージボトルの事が書いてあった。
帰って来ることのない人、大好きだった母と親友にわかっていても会いたくて。
ああ親友もなくしたのかと思った。
日本に来れば、お盆に死んだ人に会えると聞いていた。送り火、花火は死者の魂に触れられるんだと母親に聞いていたから、見たかったんだそうだ。母親は交通事故に巻き込まれ、病院へ行って死ぬ間際にはみんなと合うことが出来たそうだ。その時に、日本に埋めてほしいと母親とのの最後の約束だった。
おばあちゃんの家に行けば幼い時に見たあの大きな花火を見ることができる、楽しみにしていたのに、それでも誠二のおかげで見ることが出来た、ありがとう。
そしてあのメモに書かれた言葉は?
誰かをなくした方へ。
愛した人が亡くなりました。必ず彼らは私のことを見守ってくれていると信じています。だから強く生きましょう。
だったそうだ。
そして最後には、来年大学生、日本に行きます、その時はまたコンサートに行きます、みんなに会いに。
は?大学?いやいや小学生だろ?に俺たちは吹き出した。
知ってた?
いいや。
今知った。
何何?
純ちゃん大学生だって。
まじー?
やばい、俺彼女でいいや。
リーダーいくつ?
お前の一個上、今年二十八じゃ!
十個違う―。
「おやじ」
「ロリコン」
「ダメだ、ジロちゃん先輩―。エイちゃんが壊れたー」
俺達は大笑い。
メッセージは受け取ったよ、と書かれてあったんだ。
へへへ、歌、わかってくれたんだ。
「がんばらねーとな」
うん!ずすっと鼻をすすった。
高校生?女の子‼レディーなんて叫んでる奴らはまだ写真を見ていた。
百円玉を持ってあっかんベーしている写真には弟だろうか、そっくりな金髪の子がブーという紙を持っていた。
足りないよなー、はは。
アルバムを持った彼女は嬉しそうにしているのと、抱きしめてうつむいているのがあった。
俺に見て見てとさし出した写真にはユーチューブで俺たちを見ている、彼女と友人たち、家族だろうか多くの人が写っていた。
「海外にもファンが出来たぞ!」
俺たちは喜んだ。
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