待ち合わせの約束

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待ち合わせの約束

「あんまり早いと、ちょっとしんどいから」 祭りの待ち合わせ時間を決めた時 一言を付け加えた五十嵐(いがらし)に 「しんどいってどゆこと?」 と、尋ねたら  えくぼのできる笑い顔で 「祭りと言ったらね?」 と、笑顔返しされた。 何の話の事やらと思ったから、 あんまり気にしなくてもいいことかと それ以外にも、会話の内容を何回かスルーしたことあったっけ。 「渡里(わたり)くんは 返事に困るとすぐ話をスルーする。」 さっき笑ってたかと思ったのに 今度は ぶーーっと頬を膨らませて嫌味を言ってくるから 「女子ってめんどくさいな」 って答えたら 「そうゆうこと ほかの女子に言ったら腹パン食らうからやめた方がいいよ。」 と また笑って返された。 「五十嵐は平気なの?」 「男バスマネージャーが、そんなことでひよってたらやってけないよ」 「つよ」 「だめ?」 「だめじゃない。」 「よかった。」 この空気感が好きだった。 さらさらのストレートな髪が好きだった。 部活で誰よりも大きな声で発破かけてくる生意気な感じも ほっとけなかった。 「花火うれしいなあ」 高校入学してバスケ部に入った同期の部員の中に ひとり、女子がいた。 マネージャーで入部したその子と通学方向が同じで いつの頃からか 下校は一緒に過ごすことが多くなった。 「じゃ 明後日 たのしみにしてるねー」 俺が押していた水色の自転車を分かれ道で引き取ると いつものように バイバイと手を振りながら 自宅方面に向かっていった。 段々 日の暮れ方が早くなってる。 夏は まだまだ暑い。 けど 帰ったらとりあえず 日本史の課題やっとかないと 始業式に間に合わないのも やばいな 背中のリュックに入ってるペットボトルが ポンポン跳ねてるのを感じながら このあとの予定を想像した。 3年生の引退と同時にキャプテンに就任した。 夏が終われば 秋の大会がある。 何が何でもメンバーに選ばらなきゃ 面目がたたないっての。 けど 文武両道  これも俺の意地的にも無視できないっての。 なんて 考えてた。
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