祭りの当日

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祭りの当日

まだ 明るさが残っている時間。 その日は 祭りってこともあったから 部員それぞれの事情を考慮して キャプテン権限で部活を休みにした。 久しぶりの休みに とりあえず 学校の宿題も終わらせていた安心感もあって 深夜からオンラインゲームしながら遊んでて 明け方に寝落ちてしまった俺が 「やべーーーーー!!!」 絶叫しながら支度していたら やっぱり同じ祭りに行くらしい小恋(ここ)が 母さんに髪の毛を結ってもらっていた。 「お兄ちゃんも祭り行くの?」 「・・・・・」 「誰と行くの?」 白地にピンクの模様が入っている浴衣姿の妹が ニヤニヤしながら聞いてくる。 「お前 馬子にも衣裳な。あんまべらべらしゃべんな。」 「は? そんな口の悪いこと言ってる男はモテないからね!」 ギャーギャー騒ぐこいつをかまってる時間なんて 俺にはなくて バタバタ用意していると母さんが笑いながら 「どっちもどっち。さっさと用意しないと間に合わなくなるよ。」 と仲裁に入ってくれたのが ほんの30分前。 ほとんど普段着のままで待ち合わせの時間に着いた数分後。 俺の前に現れた五十嵐は いつもの制服やジャージではなくて 紺色に薄い紫と水色の大柄な朝顔が描かれている浴衣姿だった。 オトナっぽい色合いだったけど 帯が淡いピンク色にちょっとだけ ホッとした。 「おう。」 「ごめんね。待った?」 「いや 今来たとこ。」 「よかった。けど待たせてたらごめんね。  履きなれてなくて足痛くて。」 足元を見ながら五十嵐が言った。 何気なく 俺も足を見たら素足に下駄姿は当然なんだけど 小さい足の爪に 帯のピンクとは違う桜色のネイルが塗ってあった。 可愛かった。 あー、女の子だなって思った。 今まで気づかなかったし 意識したこともなかったけど カノジョの足は 思ったよりも華奢で 「五十嵐、足思ったより細いな。」 って本音がこぼれたら、バシって腕を叩かれた。 「いっってえ!」 「思ったよりってのは余計じゃない?」 「え。だってそう思ったし。」 「思ってても 思ったよりって言われると  いつもは太いって思ってるってことでしょ?」 「そんなこと言ってないし」 「言ってるのも一緒だよ!もう!!」 って ちょっとプリプリ怒りながら 露店のある通りを指さす。 「のど乾いたなあ。 かき氷買ってから神社行こ!」   スタスタと歩き出した。 なんだ。 全然普通に歩いてるじゃん。 アサガオの揺れる裾にちょっとだけ目のやり場に困った。 俺の好きなストレートロングな髪も きれいに編み込まれていて お団子になっていて いわゆるうなじが見える状況で なんなんだよ。調子狂うじゃんか。 「渡里くん!!行くよーー!」 おいでおいでと手を向け 笑うえくぼはいつものままなのに ざわめく人並みの中に見える彼女は とてもキレイだった。
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