かき氷と金魚

1/1
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ

かき氷と金魚

久しぶりの夏らしい行事。 行きかう人の顔も楽しそうで スーパーボール りんご飴 綿菓子 きゅうり どの屋台にも人が寄っていた。 「晩御飯食べた?」 「食べてないよ。五十嵐は?」 「私もまだ食べてない。ここで何か食べるかなあって思ってたから」 「なんか食うか。焼きそばか たこ焼きかなら どっち?」 「たこ焼き!」 「あそこに 店あるから あれにしよ」 数メートル先にみえる焼きそばとたこ焼きの並びを チョイスした。 どっか座れそうなとこがあるとラッキーなんだけどな。 「足大丈夫?」 「うん。歩ける。」 「痛くなったら言えよ。」 「うん。」 普通には歩いてるけど、やっぱ履きなれないのは分かるから あんまり無理させたくないなって なんとなく思った けど神社への道のりはもう10分くらい先だし 「ちょっと暗くなってきたね。」 「花火が始まるころには もっと暗くなるんじゃね?」 「渡里くん 寝起きだった?」 「・・バレてる?」 「後ろ、寝癖てるよ」 ぐーっと笑いをこらえた顔で俺の後ろ頭の髪をなでなでしてくる。 「マジかよ。」 「まあ 待ち合わせにちゃんと間に合ってたからえらこ。」 「めちゃはずかし。」 「たこ焼きのあとに かき氷食べていい?」 「いいよ。俺 ブルーハワイね。」 すれ違う子供がキラキラ光るライトを持っていた。 どこからか聞こえる集団のドッと沸く声。 買ったたこ焼きのたこが小さくて2人で笑った。 時折吹く生暖かい風も 祭りの雰囲気らしくて心地よかった。 「あ。金魚。」 「する?」 「やってもいい?」 「けどそろそろ神社の方に向かわないと花火の場所取れないよ。」 「そっか。」 意外となかなか見つからなかったかき氷屋の手前にあった金魚すくいに、 興味を持った五十嵐の額には うっすらと汗が滲んでいた。 「足も気になるから 帰りにまた寄ろう。」 「うん。・・」 「何?」 何か言うのを止めた気配がわかった。 少しだけ 人波を止めるように立ち止まると 俯いた顔で 「下駄、慣れてないのに履いてきてごめんね。」 丁寧に編み込まれている髪から こぼれた一本の髪がカノジョの頬を霞めた。 その頬に触れたい。 いやいやそんなことない。って思った時だ。 「あーーー!!キャプテンとマネージャーー!!」
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!