あの夏の花火

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季節はもう何度も巡っての夏だ。 やっとたどり着いた賽銭箱の前で 手を合わせた時 『ドン!』という大音響に人々の歓声が上がる。 ゆっくり振り返ると 真っ暗だった夏の空に大輪の花が咲く。 鮮やかに けれども 一瞬にしてその華やかさを散らし キラキラ降り注ぐ火の粉に 海の見えるこの街が夏の終わりを感じていた。 対岸の街にも光が降り注ぐ。 俺らはいつまでもいつまでも途切れることがない光を 見上げていた。 手を伸ばせば届きそうにも思えるその色とりどりの風景に この時間がずっと続けばいいのにと思ったんだ。 「きれいだね。」 「きれいだよ。」 「また見たいね。」 「また見よう。」 あの時 最後に手を繋いだ。 花火の音を聞くたびに思い出す夏の記憶。 空の中に消えていく夏の想い出。 今年も 変わらずきれいだっだよ。              (おわり)                    Special Thanks for you.                   2022.8/15 Monday
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