天の川の下で

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 * * * 「ホントに星が好きなんだね」 「好き、という表現は少し違うのだけれど」  彼女は含みのある言い方をした。山奥で会ったときも、星が綺麗に見える場所に行くだけだと言っていた。実際、彼女が案内した先は、邪魔な立木が無いことで、満天の星空を見上げることが出来た。  元々、星を見るのは好きだった私は、一ヶ月後の流星群を天文台で見る約束を彼女と交わした。 「あそこにしましょう」  彼女は展望台の一番高い位置に備えられたベンチを指さした。幸い、他の見物客はいないようだ。  二人で並んで座ると、腰掛ける部分に少しだけ傾斜が付けてあって、天然のプラネタリウムを見ているようだった。 「天の川もよく見える」 「あまの……何かしら」  私が指さすと、彼女は不思議そうに聞いてきた。 「知らないの? 七夕の話にも出てくるでしょ」 「たなばた?」  彼女はふざけている訳ではなさそうだ。星が好きなのに、天の川や七夕を知らないのは不思議だが、帰国子女か何かだろうか。 「ざっくり説明すると、天帝の娘の織姫が、働き者の彦星と結婚するんだけど、結婚してから働かなくなってしまうんだよ。天帝は怒って二人を引き離してしまうんだけど、可愛そうだから、一年に一度、七月七日だけは、天の川に架かった橋を渡って、会うことを許されるっていうお話」  彼女は黙って聞いていたが、ポツリと呟いた。 「そう、伝わっているのね」 「ん? どういう意味?」  彼女はそれには答えず、もう一度空を見た。
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