キャリーバッグ

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キャリーバッグ

 ……とまぁこんな具合に、最近は変なモノばかり泉に落ちてきて困っているわけです。  ちなみに今は「同級生 弟 オトし方」でネット検索をかけているところです。  仕事の決まり上基本的には金とか銀のモノを与えることしかできない私ですが、できることなら来てくれた全員に満足して帰っていただきたいですからね。些細なことでも、やれることはやっておきたいのです。  突然、頭上でドボンドボンッと水音が連続して鳴りました。驚き見上げると、大きめのキャリーバッグが4つ、私に向けてスーッと落ちてきます。  色とりどりでなんだか綺麗だなと思いました。  水面から顔を出すと、そこにはなぜか誰も居ませんでした。妙ですね。仕方ないので一旦バッグは預かり、水底に戻ることとします。 「おーい、女神さーん! 居ませんかー? 今朝バッグを投げ入れた者でーす」  夕方近くになって、私を呼ぶ声がありました。バイトに遅刻しそうな学生よろしく、私は慌てて上に向かいます。  泉のほとりにはギャルのような格好をした4人の女性が立っておりました。「マジで居たんですけど! アゲアゲ〜」などと騒いでいます。 「すいません、ちょっとウトウトしてました! ……えっと、あなた方が落としたのはこの金のキャリーバッグですか? それともこの銀のキャリーバッグですか?」 「いいえー、普通のキャリーバッグでーす。超悩んで買ったオソロのやつでーす」  どうやら久しぶりに、普通に落とし物をしただけの方たちのようでした。あぁ、ようやく私は本来の仕事ができるのですね。 「あなたたちは正直者ですね! では元のキャリーバッグに加え、この金や銀のキャリーバッグたちも差し上げましょう!」 「大丈夫でーす。荷物多くても邪魔なんでー」 「アタシもー。観光終わったからあとは帰るだけだしー」 「ウチも結構でーす」 「右に同じー」  ……え?  彼女たちは元のキャリーバッグだけを拾い上げると、ワイワイと満足げに帰っていきました。その後ろ姿に向け、私は力の限り叫びます。 「この泉はコインロッカーでもありませんー!! 勘違いどんだけー!!」
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