14人が本棚に入れています
本棚に追加
聡介は、急いで敷布団を敷き、その上に毛布を敷いて、梨乃を寝せ
その上に、毛布と布団を掛けたが、梨乃の体は、その布団が動く程
大きく震え、なかなか収まらなかった。
「これじゃ、駄目か」だが、他に、温めてやる物は無い。
「そうだっ」聡介は、いきなり服を脱いで、トランクス一枚になって
布団の中に入ると、梨乃の服も脱がせて、ショーツ一枚にした。
そして、冷たい両足は、自分の足で挟み、上半身は、しっかり抱きしめる。
まるで、大理石の様に冷たくなっている梨乃の体。
聡介は、毛布の隙間が出来ない様に、しっかり包んで、背中を必死で摩った。
「梨乃、梨乃、一体どうしたんだ、何が有ったんだ」
その呼びかけに、力無く目を開け、息を吸い込むように
「聡さん?」と、梨乃が問う。
「そうだよ」「これも、、嘘、なんだよね、、」小さくそう言うと
梨乃は、また目を閉じた。
「嘘って何だよ、帰って来たんだ、梨乃に会いたくて、早く帰って来たんだ
目を開けて、寝ちゃ駄目だ」聡介は、必死で呼びかけた。
眠ってしまったら、永久に帰って来ないと言う、恐怖が走る。
「梨乃、梨乃、何か言ってくれ」「、、あったかい、、」
「そうか、もっと暖かくなるぞ」聡介は、背中を擦る手に、力を入れる。
「会いたかった、、」「うん、俺もだ」「でも、会っちゃいけないんだ」
「何でだよ」梨乃の体の冷たさが、少し消えて来て、ほっとしながら言う。
「私ね、海の中に入って、死のうと思ったの」「何だって?」聡介は驚いた。
「死ぬ前に、聡さんとママと渚に、有難うと、さようならを言おうとしたのに
スマホを忘れちゃって、、」「そうか、それで帰って来たのか」
スマホを忘れてくれて、本当に良かった、聡介は、そう思ったが
「いくら、お父さんが亡くなって、悲しいからって、死ぬ事は無いだろっ」と
怒った声で言う「だって私、生まれて来ちゃいけない子供だったんだもの」
そう言った梨乃の目から、ぽろぽろと涙が流れた。
「何か有ったんだね、何が有ったか、全部話してごらん」梨乃の涙を
そっと拭いてやりながら、聡介は、優しく言った。
父の死の他にも、何か衝撃を受けた事が有ったのだ、聡介はそう察した。
「私ね、、」と、言いかけた梨乃は、その時になって
はっきりと、今の状態に気付き「だ、駄目よ、こんな、こんな事をしちゃ」と
聡介の胸を押して、身体を離そうとした。
「駄目だよ、まだ十分に温まっていないんだから」聡介はそう言うと
梨乃の体を、いっそう強く抱きしめた。
もう、抗えなくなった梨乃は「何で聡さんが此処に居るの?」と、聞く。
「言っただろ、早めに切り上げて、帰って来たって、電話に出ないから
渚ちゃんに電話して、お父さんの事を聞いたから、来たんだ」
「私、嘘の中で育ったから、聡さんが、ここに居るのも、嘘だと思ったの」
最初のコメントを投稿しよう!