火事

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病院へ着き、教えて貰った、渚の部屋に駆け付ける。 「渚っ」ドアを開けると、渚は、立てたベットに寄り掛かって座っていた。 傍には、美幸が座っている。 「梨乃、、」「怪我は?大丈夫なの?」咳き込む様に聞く梨乃に 「大丈夫、怪我は無いよ」渚は、小さく笑ってそう言ったが 渚の長い髪の毛は、先が、ちりちりに焦げていた。 「本当に?」「ああ、念の為に、明日まで、入院させる事にしたよ」 美幸が、そう言い「とにかく、渚が無事で、本当に良かった」と、涙目で言う 「ママ、店は?」門倉が聞くと「全焼しちゃったよ、、、」 そう言った美幸は、がっくりと肩を落とした。 「全焼って、、原因は?」門倉がまた聞く。 「放火だよ、彼奴が、、」美幸は、声を詰まらせ、落とした肩を震わせた。 梨乃と門倉には、直ぐに分かった、美幸をつけ回していた、元夫だと。 「梨乃、ごめんね、これだけしか、持ち出せなかったんだ」 渚がそう言って、梨乃の保険証や、貯金通帳や、印鑑など 大事な品物を、まとめて入れていた、布袋を渡した。 「馬鹿ね、こんな物、焼けたって、再発行して貰えるのに、、、 こんな物を持ち出す前に、早く逃げないから、髪がこんなに、、」 梨乃も、涙ぐんで言うと「これを、絶対梨乃に、渡さなきゃって思ったから 怖い火の下を、潜り抜けられたんだよ、これが無かったら 怖くて、二階からは降りられなかったと思う」渚は、そう言い 「私のバックも、持って出られたけど、枕元に置いていたスマホは 忘れちゃって、燃えちゃったみたい」と言った。 渚が、思ったより元気そうだったので、梨乃は、ほっとしたが 力のない声で話す、美幸の話を聞いて、門倉と梨乃は、もう一度驚く。 それは、美幸を送ってくれる、同じアパートの親子が、仕事に出掛けて 直ぐの、8時過ぎだった、美幸は、休日とあって、まだ寝ていたが パチパチと言う、異様な音で、目が覚めた。 「何だろう?」音がする、南側の部屋の、掃き出し窓のカーテンを開けると 目の前が、真っ赤だった「え?」庭の、ウッドデッキが燃えている。 慌てた美幸は、ふろの残り湯をバケツに汲み、窓を開けて掛け 消そうとしたが、火の勢いは強く、バケツの水くらいでは、駄目だった。 その時、火事に気付いた近所の人が、二人、消火器を持って来て、掛ける。 窓を開けていたので、部屋の中まで、消化液で、真っ白になったが 燃えていたウッドデッキと、外壁は、何とか消し止めた。 直ぐに消防車も、警察も来たが、もう火は消えていた。 「石油を撒いた後が有ります」そう言う消防士の声で これは、元夫の、信也の仕業だと、美幸は、唇を噛んだ。 警察から、放火犯に心当たりは?等と聞かれていると、スマホが鳴り 「ママ、大変だ、店が燃えてるよ」と、雑貨屋の主人が、知らせて来た。 「何ですって?」こんな時間なら、まだ、渚も梨乃も寝ているかも知れない。 美幸は、真っ青になって、事情を話し パトカーで、店まで連れて来てもらった、すでに消防車が、何台も来て 放水していたが、美幸の目の前で、店は、大きな音と共に、焼け落ちた。 「渚~っ、梨乃~っ」美幸が大声で叫んでいると 「お一人は、救急車で、中央病院へ運ばれました」と、消防員が教えてくれた 「と、言う訳でね」「何と言う事、、、」梨乃も、門倉も それ以上の、言葉は、でなかった。 「ママのアパートに、火を点けた後、店にも来て、火を点けたんだよね」 渚が、そう言った「酷すぎる、、」梨乃は、怒りに震えた。 「梨乃、渚に付いていてやっておくれ、私は、警察や、消防署に行って 後始末をしないといけないんだ」美幸は、そう言った後 「アパートも、寝れる様な、状態じゃ無いからね~ 私は、ホテルにでも泊まるけど、梨乃は、どうする?」と聞く。 すると門倉が「ママ、梨乃ちゃんの事は、俺に任せてくれ。 俺にも、少しは責任が有るんだから」と、言い出した。
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