火事

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「もし、俺が映画に誘わなければ、梨乃ちゃんが、火事に気付いて ここまで酷い事には、ならなかったかも知れないし、渚ちゃんが 怖い思いをしなくて済んだかも知れない、だから、梨乃ちゃんの事は 俺に任せてくれ」そういう門倉に「そうだね、マスターに頼めるなら 私も、一番安心だ、梨乃、落ち着くまで、マスターの所に、居ておくれ」 美幸は、そう言うと、部屋を出て行った。 「渚ちゃん、俺と梨乃ちゃん、お昼まだなんだ、何か食べて来たいんだけど」 門倉がそう言うと「良いよ、そうだ、ついでに買い物をして来てくれない? 退院するとしても、着る物が無いから」渚がそう言う。 食事はともかく、渚と自分の着替えが欲しかった梨乃は、門倉と一緒に 病院の近くのファミレスで、パスタを食べて、タクシーで北沢まで行ってみた まだ、規制線が張られていて、ほんの数時間前に、渚と笑いあっていた場所は 鱗状になった真っ黒い柱が、数本立っていて 無残に焼け焦げた家電類が、折り重なっている他は、全て炭と灰になっていた 「全部、焼けちゃったんだ、全部、無くなったんだ」 自分の生活の場所が、全て無くなったと言う、現実を、突きつけられ 呆然と立ち尽くす梨乃に「渚ちゃん、よく外に出られたな~」と、門倉が言う そうだ、今は、渚が無事だった事を、喜ばなくっちゃ。 梨乃は、気を取り直し、二人は、商店街へ向かった。 商店街は、休みだったが、あちこちの店先で 店主たちが屯して、話し込んでいて、梨乃を見ると 「梨乃ちゃん、大変だったね~」「渚ちゃんは、大丈夫かい?」と 顔なじみの店主たちが、声をかけてくれる。 「有難うございます、私も、渚も無事で、元気です」 梨乃は、気を張って、店主たちに、そう報告した。 その中に、寝具屋を見つけた門倉は「立木さん、梨乃ちゃんが使う寝具一式 うちの店に、届けてくれないか」と、頼んだ。 「良いとも、出来るだけ可愛いのを、見繕ってあげるよ」 立木は、そう言うと、自分の店に走って行った。 門倉は「美濃屋さん、梨乃ちゃんと、渚ちゃんの着替えを買いたいんだ。 悪いけど、店に入れてよ」と、衣料品店の店主に頼む。 「さぁさぁ、どうぞ」美濃屋の主人は、快く、店を開けてくれた。 渚のサイズは、梨乃とほとんど一緒だった。 梨乃は、渚に似合いそうな服を、二着選び、自分のも選んだ。 「いくらですか?」と、聞いたが「今日は休みなので、明日にしてくれる?」 と、言われ「じゃ、明日に」そう言った門倉は、二人分の洋服と パジャマや下着が入っている、大きな紙袋を抱え、外に出た。 すると、待っていた、化粧品屋の悦子が「マスター、女の子だからね~ 化粧品も要るよ」と、言う。 「そうだな、悪いけど、お宅も開けてくれる?」「はいよ」 悦子は、店を開け「梨乃ちゃんは、いつもこれだよね」と 梨乃が使っている化粧品を、ひと揃えして「これは、おまけね」と それを入れる、バックも呉れた。 「すみません、渚の分も、お願いします」渚も、化粧品は、ここで買う。 「そっか、渚ちゃんのも要るわね」悦子は、渚が使っていた化粧品も ひと揃えして、同じように、バックに入れてくれた。 「支払いは、明日で良い?」門倉がそう聞くと 「その方が良いわ」と、悦子も言った。
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