盗賊と女海賊2

1/1
20人が本棚に入れています
本棚に追加
/79ページ

盗賊と女海賊2

 リドルの街を探し歩くジャック。  こんな真夜中に人などいない。いるとしたら、悪さをするような人間だ。  まともな人間ならば、寝ている。  といっても、ジャックも、真夜中に歩いているのだから、怪しい者だと思われても仕方ないのだが。 「ふわぁぁぁぁ~」    ジャックは大あくびした。 「眠いっ!!」  誰もいない中、ひとりで叫ぶ。声が響く。 「どうせ、リドルの街に着くまでに時間かかりそうだし、今日は寝よう!」  そう言って、木の陰に隠れて、木に背を預けて座り込む。  腕を組んで、顔を伏せて目を閉じる。  しばらく、幼いころのジャックと盗賊仲間が、家族のように食事をしている場面が頭に浮かんでいた。  しかし、数分後には完全に眠りについた。  目が覚めたとき、既に日は昇っていた。 「んん~!!」  のん気に背伸びをしてストレッチをする。  辺りを見回して、河へと向かう。顔を洗うためだ。 「身だしなみは、ちゃんと整えないと、女の子にモテないしなぁ」  他の人から見たら、何言ってるんだ、この人はと変な目で見られるだろう。  ひとりで、女の子にモテない、なんて言っているのだから。  河の水で、ガツガツと大雑把に顔を洗った。    予想以上に冷たくて、身震いする。 「冷たっ!! こんなに冷たいとは……まぁ、おかげで目が覚めたから、いっか」  ジャックは気を取り直したところで、リドルの街を探す。  ジャックが依頼された仕事は、リドルの街に潜んでいる盗賊を捕まえること。  ジャックは、盗賊でも、罪のない人間から物を盗むことはしないし、盗むのは、自分が不利な状態にあるときだけだ。  普段は物を盗むことはしない。  だが、ときには人の命を奪って、物を強引に奪っていく盗賊たちのせいで、ジャックも巻き込まれてしまうので、大迷惑だ。 「人助けするほうなんだけどなぁ……バカな盗賊たちのせいで、本当にメンツが丸潰れだよ」  ジャックは呟く。  そんな盗賊たちを排除することが、ジャックの仕事。  パブで仕事の依頼を受けつける。  お互いに条件が合致すれば仕事開始。  ただ、中には、タダ働きさせられることもあるから、これだけでは食べていけない仕事だ。  それでも、人助けをすることによって、その人たちが喜んでくれることが嬉しい。だから、この仕事を続けている。  結局、あまり人もいなかったので、ほとんど、勘で、リドルの街に向かっていた。  これが当たっていたらしい。  看板を見ればリドルと書いてある。 「あぁ、ここなんだ」  リドルの街は華やかで賑わっている。観光地みたいだ。 「へぇ……随分と賑わってるなぁ」  お店もたくさん並んでいて、目移りする。    飲食店からアイテム、武器屋まで様々だ。  突然、グーッとジャックのお腹が鳴る。 「そういえば、何も食べてないな……」  ジャックは何か食べようと、飲食店を物色した。 「ここ、良いじゃん」  その飲食店は海を眺めながら、食事ができる。  ジャックは迷わず、海を眺めながら食事ができる飲食店へと足を運んだ。 「いらっしゃいませ、お決まりになりましたら、声をおかけくださいね」  高校生くらいの女の子が笑顔で声をかけて、水をくれる。 「おぉぉ」  席に着くと、すぐに海が広がっていた。  透き通った青色の水が日光を浴びて、光っている。  しばらく海に見惚れていた。  綺麗な海だ。  ジャックは、高校生くらいの女の子店員に声をかけられ、ハッとする。  完全に海に見惚れて、食べることを忘れていた。 「あっ、じゃあ、ステーキお願いします」 「わかりました。海、綺麗ですよね。ここの海は他の海とは次元が違うと感じますよね」  女の子店員は、そう言ってメニューを下げた。  海は本当に綺麗だ。汚い心が洗い流されていく。  それに波の音も心地いい。  きっと今日は穏やかな日なのだ。  海では船が走っている。  見ているだけで気持ちよさそうだ。  やがて、注文していたステーキもきた。  「美味しそう」  鉄板の上で、ジューッとステーキが音を鳴らしている。ソースのいい香りもしてきた。 「美味しいな」  ジャックは、ステーキを味わいながら、ゆっくりと食べている。口の中で肉汁が広がった。  時間をかけて、食事を楽しんだ直後だった。  海を眺めたジャックは、海の異変に気がついた。  綺麗だった海が濁っている。  食事後に、また海見て癒されようと思ったジャックは、ショックを受けた。  透き通った青だった海は、あっという間に赤く染まっている。  ジャックは支払いを済ませた後、事情を話して、そのまま、海へと飛び出した。  砂浜には誰かが倒れている。  近づいてみると、そこには驚愕する光景が広がっていた。
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!