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「つまり……あの時、あなたは感染症を患っていたんですよ」 「感染症……?」  先生曰く、半年前に私が高熱を出して数週間寝込んでいたのは感染症にかかっていたからなのだという。  当時、彼は原因がわからないと首を傾げていたが……なんでも、各地で似たような症状に悩まされている人がいて気になっていたらしい。  それで、数日前にようやく医学研究の成果が出て原因が判明したのだとか。  徐々に免疫細胞が減っていくその病は、感染者と性交渉を持つことで高確率でうつってしまうとのことだった。  ──ということは、私はあの暴漢から感染したのかしら……? 「それで……こんなことをお聞きするのは失礼かもしれませんが。症状が出てから、誰かと性交渉を持ちましたか?」 「あっ……」  半年前、自分がマルセルに頼み込んで別れる直前に体を重ねたことを思い出す。 「はい……持ちました」 「そうですか……。それで、相手の方とは連絡が取れるんですか? もし、取れるなら早く教えてあげてください。治療をしないまま放っておくと、数年以内に間違いなく死に至ってしまうので……」 「……亡くなりました。数日前、訃報が届いたんです」 「は……?」  先生は信じられない、といった様子で目を瞬かせる。 「まさか……そんな馬鹿な。いくらなんでも、早すぎる」  先生が言うには、発症から死亡までどんなに早くても二年はかかるとのことだった。  今、私の症状が治まっているのは、いわゆる無症状期間に当たるからなのだそうだ。 「いや、待てよ……」  先生は、ハッと何かに気づいた様子で目を見開く。
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