桜日和

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 この数字はいつから見えていたのか。今では覚えていないが、意識し始めたのは祖母が亡くなった時からだった。入院した祖母のお見舞いに行ったあの日、祖母の頭上に表示されていた数字は「10」だった。なんてことのない「10」という数字。意味も価値もないと思っていた。  次にお見舞いに行った時、祖母の頭上に表示されていた数字は「3」だった。祖母にあったのは一週間ぶりだった。その空白の日に合わせてカウントダウンのように減っていた数字。少しだけ嫌な予感がした。  次の日、案の定祖母の頭上の表示は「2」だった。確信があったわけじゃない。でも何故か頭のどこかに理解という言葉があった。私はそのことを両親や看護師に話した。けど当時の私は7歳だ。誰も私の話を心の底からは聞こうとはしなかった。  次の日、祖母の頭上では「1」という数字が表示されていた。目に見えて体調も悪くなっていた祖母。ほとんど確信的だった。 「おばあちゃん、実は……」  そのことを全て祖母に話した。まだ7歳で未熟だったから「話さない」という選択肢を思いつかなかった。ただ祖母を不安にさせるだけなのに。  私の話をちゃんと聞いてくれた祖母は優しく笑って細くなった手を少し上げた。その手を私が握ると祖母は、 「ありがとう」  そう言った。次の日、祖母は亡くなった。
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