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入学式の日、人と数字が一気に密集する体育館。高校生になりたてなんてまだまだ若い。そのせいかおかげか数字も一人一人が多い。他人の頭の上も私の頭もごちゃごちゃだ。
「はい」
その時、名前を呼ばれ控えめな返事とともにステージに立った一人の男子生徒。ここにいる生徒の中で最も成績優秀者であり、代表者だった。頭上の数字が印象的だったから後ろ姿しか覚えていない。
「137」
その数字を見て瞬間、ここにいる全員の代表者であるということが皮肉に思えた。ここにいる誰もが当たり前にできることができないから。この高校で仲間とともに学び、成長することなんてできないに等しいから。
その日以来それほど小さい数字は見ていない。
「病気で入院してるんだってよ」
この時代、情報なんて簡単に広がる。ネットで、噂で、人伝にどんどんといとも簡単に。他人の暇つぶしに使われるその情報に傷つくことだってあるのに。
この数字を当人に伝えようか悩んだ。初対面の人間に訳の分からないことを言われても信じるわけなどない。けど、もしかしたら信じてもらえるかもしれない。もしそうなれば、少しはマシな最期を迎えられるかもしれない。そんなエゴが消えないからだ。
普通、自分の死期を告げられて平穏でいられるだろうか?
祖母はどんな気持ちだったのだろう。あの優しい笑顔の裏に、どんな感情があったのだろう。
なんで私は、自分の寿命だけは見えないのだろう。
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