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ソーセージ
クリスマスも変わらずオカンから晩飯の寿命について大声出され、兄貴は当たり前のように家でメシを食い、なんなら他県で働いてる姉貴までがクリスマス休暇とやらでケーキ目当てに帰ってきた。
クリスチャンでもないのに、聖しこの夜に勢揃い、なんなん?
これにはオカンもなんか考えるところがあったのか、フォークでミートローフを突きつつため息をこぼした。
「まあええねんで。ええねんけども、世の中コロナも去ってウキウキのクリスマスやいうのに、なんで三人とも家でご飯食べてるか、よ。私のほんまの計画では孫と食べてる予定やったのに」
クリスマス休暇含め、ほぼオンラインで業務を遂行してるらしい姉貴は、もう年明けまで会社に行くことはないという。そんな、まあいわゆるエリートの姉貴は結婚はしないと公言してるし、別にエリートでもなんでもない兄貴も、こないだ趣味に忙しいから恋愛には興味ないと言い放ってた。
オカンの計画を狂わせたらしい上二人への愚痴に、姉貴がヘラっと笑って俺を見る。
「頑張れよヒロム」
「なんでやねん」
恋人が同性の俺は一番孫と縁ないやんけ──て、そうか。別れたんや。そして俺は、別にゲイなわけやないやん。
「──頑張る」
謎に力の入った俺の発言に、姉兄が食べる手を止めて賞賛半分、からかい半分の目を向けてきた。
「おおっ! やるやん」
「まずは相手やろ」
「安心しいや、ヒロム。結婚詐欺師もイケメンなわけやないらしいから」
「どういう意味や」
「あんたら失礼なこと言わんで。うちのヒロムくんは可愛らしいやん。なあ?」
オカンに同意を求められたから、自身のことではあるが、とりあえず頷いておく。
「うわあ。親の贔屓目は怖いわあ」
「やかましわ。こんなイケメンつかまえて」
まあ? なんか? 圭人とか? 塩顔とか? その辺の同性愛的嗜好? のやつらからは可愛い言われたし?
でも奴らは、ヤレそうな相手になら全員に言うてそうではあるから───。
「可愛いなあ」「あー、めっちゃええ」
そんなセリフと共に、間抜けにも蕩けた顔を俺以外にも見せたんかと思考がやっぱりそこに起結して、フランクフルトソーセージを突き刺すフォークにやたらと力がこもった。
想像したら、何か、うん。
「ニイー、これ。ハムいる?」
「食わんの?」
「んー」
そして何かごめん、兄貴。
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