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「ワタシノ シュミハ オンガクカンショウ デス」 「ワタシハ ガクセイ デス ホウリツ ヲ マナンデイマス」 「アナタノ シゴトハ ナンデスカ?」 教科書で見た記憶のある構文どおりの会話が、この若者の生真面目さを表しているようで、とても好ましかった。 互いに、翻訳機能付き端末を持っているのに、それを使おうとしない、そんな心意気のようなところに、なんとなく性格的な共通点を感じて、楽しくなってきたところで、次の質問が来た。 「アナタハニホンジンデスカ?」 これは、微妙な質問だ。 おそらく正直にハイと答えても、この人のよさそうな、そして、ある程度の教養も感じるこの若者は、 あからさまに態度を変えたりはしないだろう。 しかし、私の今までの経験が、それを拒む。 何と答えようか一瞬考えて目が泳いだ私に、目の前の若者は、自分の発した質問の意味と、 私の迷いに気づいたようだった。
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