募る愛しさ

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 以前は人と寝る事なんてできなかったのに、慣れるってこういう事だろう。その日の朝も出掛けにキスをされた。  慣れとは恐ろしい物で、期待してしまう自分に驚く。  帰宅は深夜2時を過ぎていて、酔っぱらった淳を部屋に送り届けてから部屋に帰った。  明日の仕事は事務所で事務処理をするだけなので、夕方には帰れる。  真夜中なのに空也は起きていて、「お帰り」と出迎えられた。 「丁度寝ようとしてたところだ。早く着替えてこい」 「先に寝ていいですよ」  自室に着替えに入る。  着替えて洗面所に行って出てくると空也の姿は無かった。  自室のベッドに潜り込む。  また勝手に入ってくるかな……。  だけど、朝起きても隣りにその姿はなかった。リビングに行くといつものように空也が朝食の用意をしていて、言われるがままに手伝って席に付いた。 「今日は夕方には帰りますね」 「そうか」  今朝のメニューはパンとコーンスープ、オムレツ、サラダだった。  食べ終わると食器を食洗機に入れる。 「今朝は何時に出る?」 「10時前には出ます。今日は淳はオフですし、私1人で事務所に行けばいいですから」 「自由が利くんだな」
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