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あんな跡つけていたのかも。
『待ってるからな』
あれは今日だという合図。
帰ったら……そう言えばメールするように言われてた。
携帯を取り出すが、開いて、閉じて、開いて……。
繰り返すうちに淳の支度が整ってしまった。
「宮? 帰るぞ」
「はい」
淳の鞄を受け取って控え室を出る。
「淳……運転を代わって貰ってもいいですか?」
「ああ。どうした? 気分でも悪いのか?」
「いえ、ちょっとぼーっとしてしまって……」
鞄を助手席に乗せて、鍵を渡す。
コートを脱いで後部座席に座った。
「疲れてるんだろ。時谷先生との同居、2週間弱か…寝不足なのか?」
運転しながら聞いてくる。
「そういう訳ではないんですけど」
「寝ててもいいぞ」
「ええ」
座席に身を沈めて、窓の外を眺める。
明日は休み……。
『俺に抱かれたいか』
少し掠れた低い声。
思い出しただけでも体温が一つ上がる。ここ数日煽られるだけで開放できない熱に翻弄されて、少しのことですぐに熱が上がる。
今夜……。
帰ったら、どうなってしまうんだろう。
ギュッと目を閉じる。
「宮?」
「……な、何ですか?」
「大丈夫か?」
「ええ。大丈夫です」
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