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「だったら早く降りてこい。こんな所にいつまでもいたら風邪引くぞ」
腕を引っ張られる。
「ち、っちょと……空也」
車から降ろされて、空也が座席からコートと鍵を取って先に歩き出す。
まだ歩けないほどじゃないけど……。
「空也……」
車にもたれて声を掛けた。
「どうしたんだ?」
引き返して少し苛立った声で顔をしかめた。
「……あの……もう少しここに……います……」
「早く上がれ」
腕を引っ張られて、引きずられるようにエレベーターに乗せられる。
「風邪でも引いたのか?」
近づいてきて額に手を当てられて、熱を計るためなのか首に手を当てられる。
「熱はないな。具合が悪いなら部屋で寝ろ」
そう言って到着したエレベータカーから降りると、玄関の鍵を開けて中に入って行った。
ほっとしたのとちょっと残念に思う気持ちとが入り交じる。
リビングに入ると空也がテーブルの上に夕食を並べていた。
「食欲は?」
「あります……着替えてきます」
椅子にかけられたコートを取って自室に入って着替える。
寝間着に着替えるほどの時間じゃないので、ジーパンとセーターを着込んでリビングに戻る。
食欲なんて本当はない。
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