『愛してる』

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 極度の緊張で口も開けそうにない。口から何か飛び出しそうで俯いてしまう。 「早く座れ」  空也が急かしても、椅子の側で立ちつくしてしまう。 「どうしたんだ」  空也が椅子を回って側にくる。 「初音?」  俯いた頭を撫でられて、目の前の胸に額を付ける。 「空也……」  そのまま空也のセーターの胸を両手で掴む。 「どうした?」  さっきとは違う優しい声。 「空也……」  背中を撫でさすられて、しがみつく。  熱いため息が漏れる。 「空也……熱い……」  この熱をどうにかして欲しい。 「やっぱり風邪ひいたのか?」 「そ、そうじゃない……」  首を振る。 「そうじゃなくて……空也……」  顔を上げて見つめる。  昨日はあんなに熱く『俺に抱かれたいか』って聞いたくせに。  『明日まで待て』って言ったくせに……。  『待ってるからな』って今朝だって……。 「くぅ……」  唇が触れる。  電流が走るように身体が反応して、揺れる。  触れただけなのに、自然と唇が開く。  舌が入ってきて、舌に絡ませられる。  吸われて差し出した舌を絡ませて、唾液を飲ませられる。 「んんっ……はぁ……ああ」  ガクンと膝が折れた。
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