『愛してる』

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 そのまま後ろに倒れそうになって抱き留められて、床に座り込む。 「ご、ごめんなさい……なんだか……」  耳まで赤くなる。  肩を掴んでいた手も痺れて力が入らない。 「立てるか?」 「……無理……です」  見つめた唇が濡れて光っている。  それだけのに、身体が疼く。  抱き留めて背中に回った手から熱が伝わってきて、何もかも委ねてしまいそうになる。  このまま……抱きしめていて欲しい……。 「腕回せ」 「え?」  腕を首に回させて、背中と膝裏に手を回される。  そのまま持ち上げられる。  寝室のドアの前。  空也が止まる。 「ドア、開けろ」  両手がふさがってるせいでドアが開けられない。  このドアを開けたら、間違いなく抱かれる。  もう、待って貰うことはできない。 「空也……」 「俺に抱かれたいだろう……初音……」  わざと耳に息を吹きかけるように名前を呼ぶ。  身震いするように身体が反応する。  もう待てない……。  熱い……。  手を伸ばしてドアノブを押した。ベッドに降ろされる。  ベッドサイドの明かりを、空也が腕を伸ばして点けて、起き上がってドアの方に向かう。 「空也?」  慌てて呼び止める。
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