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初対面でこんな事を言われたこともないし、相手が好きな作家ならなおさら緊張してしまって、顔をこわばらせた。撮影が終わって、淳が側にやってくる。
「宮?」
「え、ああ、お疲れさまでした。次は……」
鞄を開けようとして白い物がヒラリと落ちた。
「落ちたぞ」
淳が拾ってくれる。
「名刺?」
「あっ」
慌てて受け取る。
勝手に鞄に……。
鞄が引かれた感じがしたのは名刺を押し込まれたせいだろう。
「誰の?」
「関係ないです」
「冷たい」
淳が拗ねた顔で見ているが無視して、鞄の中に名刺を入れ直して、スケジュール帳を取り出す。淳を急かして楽屋で着替えを済ませると乗ってきた車に乗り込んで事務所に向かう。
「次の仕事は?」
「今から事務所の方に行って私は潤の方に行くので、事務所から次の仕事に行ってもらっていいですか?」
「なら、そこの駅で降ろしてくれていいよ。たまには電車くらい乗らないと……」
実際時間に追われているのは確かで、淳を事務所に送ってから潤を迎えに行くのは時間的にもロスが出るので、ありがたい申し出だった。
「そうして貰えると助かります」
「はーい」と言って、後部座席でゴソゴソと自分の荷物を纏めはじめた。淳は『JYUN』という名前のモデル。
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