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「カードが入ってる。買い物できない」
「晩ご飯くらい私がおごってあげますよ。それより弁護士って?」
運転しながら自分の名刺入れを出す。中には数枚の弁護士の名刺。目的の名刺が見つかったのか、それを返してきた。
「本当はちょっと脅して今後しないように注意するつもりだったのにあいつが騒ぐから……」
「写真とかは撮られてないですか?」
「宮? 俺が痴漢したと思ってないか?」
「いくらなんでもそんなに餓えてはないでしょうから、話はちゃんと理解しています。相手は駅員に引き渡したんですね?」
「そうだ」
「被害者は『直樹』君?」
「そう。高橋直樹、高校2年生」
「分かりました。後で連絡を入れておきます。で、写真とかは撮られてないですか?」
「たぶん大丈夫。そんな気配はしなかったし、すぐに移動したから」
写真はあまり撮られていいものじゃない。
いいことをしていてもその逆でも。
何処からほころびが出るか分からないから。
それはお互い痛いほどに分かっている。淳をスタジオに送り届けて、スタジオ内の通路のベンチに腰掛ける。
今日はこの撮影で終わり……。
明日は午前中に撮影で夕方からまた別の撮影。潤は夕方から泊まりでロケに出る。
そろそろ一人ずつ別のマネージャーをつけてもらった方がいい。
さっきのようなことが今後ないとも限らない。
淳は海外に行きたがっているし、潤は女優を目指している。
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