ー1一

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身長は平川ほど高くないが、こんがり日焼けをした彼はなかなかフレッシュに見える。 少しカールをしたブラウンの髪がところどころ跳ねていて、丸い目が人懐っこさを出していた。 お手本のような犬顔。 決まり。ハチ。 平川と水野の後ろにいた二人はさらに若く20代くらいだ。 「槙野華(まきのはな)です。サイバーセキュリティ対策本部から異動になりました」 150cmくらいの小顔でおかっぱヘアに黒縁眼鏡。 童顔で公安の警察官には到底見えない。 声も少し高めで、全体的に幼く見える。 黒いリクルートスーツを着ているせいか、どこから見ても大学生だ。 アラレちゃん以外に選択肢は無い。 「宮川浩輔(みやがわこうすけ)です。捜査一課から異動になりました」 槙野の隣にいた宮川はわざわざ私に近づいてきて右手を差し出した。 長身、細身で色白。 きれいなアーモンド形二重の目に小さな顔でまるでモデルのよう人だった。 「外務省の美人さんと仕事ができるなんて光栄です」 ポッと自分の頬が熱を持つのを感じる。 恥ずかしくなって慌てて握手をしていた手を離した。 刑事だといわれなければわからないほどの美形。 襟足を刈り上げて短髪にしているが、サイドはツーブロック。 刑事さんでもこんな髪型許されるんだと少し驚いたが、とんでもなく似合う。 にっこりと笑った口元から見える歯は真っ白だった。 プリンスチャーミング。異論は受け付けない。 「警察の方ってかっこいい方が多いんですね……」 「うれしいなぁ」 宮川はにこやかに笑ったままだったが、会議室の雰囲気は明らかに重くなった。 平川に至ってはフンっと鼻を鳴らす始末だ。 ほめたつもりだったのだが、どうも空気を悪くしてしまったらしい。 真斗ですら天を仰いでいる。 褒めたつもりなんだけどなぁ。 「ごめんなさいね。愛想がなくて。打ちとければ上手くやれると思うわ。よろしくね」 永野が苦笑いを浮かべえる。 ほぼ全員軽く会釈をしてくれたが、平川は全くの無視だった。 目も合わせずにドスッと椅子に座り、窓の外に視線をやってしまう。 「実はまだそろってないの。そろそろいらっしゃるはずだと思うんですけど」 「私、何も知らされてなくって。辞令をいただいただけで、公安の皆さんとどんなお仕事をさせていただくのか知らないんですけど、業務内容はどのようなものなのでしょうか」 「それは、私が説明します」 後ろから声がして、入り口に振り返ると、そこには一人の女性が立っていた。 テクノカットのショート、前髪は切りそろえられている。 日本人なのに、ブロンドの髪がとてもなじんだきれいな人だった。 白いタイトスカートにジャケット。 黒いスーツだらけの会議室で圧倒的存在感を放つ彼女は、私に向かって微笑みかけた。
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