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「2人とも、今日も決まってるなぁ」
プロジェクターの下に、宮川、槙野、大塚、私と並んで壁に映し出された2人を眺める。
水野は特に興味がわかないようで、デスクの中に私物を入れつつ整理をしてる。
2人とも黒のタイトスカートにジャケットというフォーマルな格好をしているが、ミキは相変わらずブロンドだ。
固いおじさんたちの中で華やかな2人が隣同士で着席し、会見に応じている。
ミキが会見に参加するのはわかっていたが、永野も同席すると聞いた時にはかなり驚いた。
それよりも驚いたのは、永野の年齢だ。
すでに40代後半らしい。
最初に会った時は30代かと思っていたが、まさかのアラフィフ。
美魔女なんてどころじゃない。
ミキはミキで若さを全面に出している。
30歳で警視庁公安部と新部署を立ち上げ、その責任者を務めるのだ。
若く、奇抜な女性課長。
彼女が出すカリスマ性は不思議な吸引力がある。
「ミキさんってさ、大学時代からあんな子だったの?」
「当時はメッシュが入ってました」
「とがってるねぇ」
テレビ画面の中ではミキが話始めていた。
自信に満ちた微笑み。
テーマ―パークのショーキャストのような話し方。
大学時代から空気を自分の味方にするのが得意なのは変わっていない。
やっぱり政治家にでもなればいいのにと思う。
『日本における特殊能力犯罪の年間発生件数は年々減少していますが、依然ミュータントたちへの偏見が後を絶たず、不当な扱いを受けている方々が多く存在します。私たち公安12課特、殊能力犯罪専門部のミッションは特殊能力保持者関連の犯罪に特化した部署を立ち上げることで迅速な解決を目指すとともに、不当な偏見なしにミュータントたちと共生することができる日本社会の形成です』
一斉にカメラのシャッターがたかれ、ミキが再び微笑んだ。
一方、隣に座る永野の表情は読めない。
まっすぐに前を向いて背筋を伸ばして座っているが、結局彼女は最後まで発言することはなかった。
「すごいよ、もうネットで反響が出てる」
槙野がスマートホンを私にかざした。
「美人すぎる国連職員だって。確かにきれいだよね、ミキさん」
「僕はほのちゃんも美人だと思うよ」
宮川が私にウィンクをする。
私は苦笑いを浮かべるしかなかった。
そして私の隣で画面を見ていた真斗は心底不機嫌そうに宮川をにらみつけていた。
確かに宮川はセクハラとしてアウトだと思うが、わたしは悪ふざけくらいにしか考えていない。
仲良くなった守衛の警察官によれば、宮川は女たらしで超有名だ。
きっと女の子みんなに同じように接するのだろう。
「そういえば、平川さん、今日も来てないの?」
急に思い出したように槙野がつぶやくと、水野が困ったような笑顔を浮かべた。
新しく12課が立ち上がることが決まってから1か月が経つが、平川がオフィスに姿を現したことは数回しかない。
そして姿を現したときには必ずと言っていいほど永野と別室で口論をしていた。
「平川は、ちゃんと加わってくれるか分からないね」
「どうして永野さんは平川さんにこだわるんだろうね」
「永野さんは平川に信頼を置いてるんだ。平川が新人のころの指導員だった人だからな。それに、平川は公安のエースだぞ。いろんなところに顔が広いんだ。」
永野が平川に信頼を置いておることはなんとなく伝わるが、それ以上に分からないのは、なぜ平川が12課で働くことをかたくなに拒もうとしているかだ。
「平川さんってどうして12課から離れたがってるんですか?」
「さぁ。平川さん、もともとあまり友達と一緒に仲良くってタイプじゃないから」
そう言って槙野たちはスクリーンにうつるミキの演説に注意を向ける。
水野だけが穂香に手招きをした。
「俺が言ったって言うと、平川は怒るだろうけど。君は知っておいた方がいい」
「何をですか?」
水野がデスクから立ち上がり、引き出しから一つのファイルを取り出し、穂香に差し出した。
「今日の夜、ここに行っておいで。多分、平川はここにいるよ」
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