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人間に手を差し伸べるなんて、らしくないことをしてしまった。今まで伸ばそうとしてきた手はどれも振り払われ、嫌がられ、理不尽な攻撃を与えられ、気が付いたら手を引っ込めるようになった。恐ろしい化け物がいると噂され誰も近付いて来ないならば、私も彼らから向けられる敵意に怯えずに済むと思った。もう、それでいいと思った。
じめじめしていて実に最悪な夜だ。これ以上の暑さなんていらない。けれどほんの少し、そっと感じた温かさは心地の良いものだった。
素敵なお兄さんに助けられたのだと子供が言っている。ほら、あそこに……。そう言ってこちらを向く直前に、私は闇に紛れて姿を消した。
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