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このときホッとしたのは確かなんだけれど、それと同時に恥ずかしさが私を苦しめた。だってこんなに名前呼ばれて……ほんとに迷子みたいだから。でも、実際迷子になったってことよね。
「ヒナ! 良かった……ごめんヒナ! 勝手に見失っちゃって本当すまん!」
「い、いいからちょっと待って。そんな私の名前おっきな声で連呼しないで……!」
「あれ……その足」
「あぁ、さっき鼻緒が切れちゃったみたいで」
「怪我は大丈夫か?」
「うん。それは大丈夫よ」
「良かった、あっちに置いてあるのか。ほら、まず取りに行こう」
そう言って私の手を掴むと、優しく引っ張ってきた。
その後、近くの芝生っぽい場所で下駄の様子を見たトキタ君が言う。
「ほんとだ……切れちゃってるな。これじゃこの先歩くのも辛いだろ。よし、なら俺がおぶっていこうか?」
「え!?」
「あはは、嘘だよ。さすがに恥ずかしいだろ、ヒナのことだから」
「それは……」
「ここで見るかぁそしたら!」
「ここで……って、見えるの?」
「もちろん、木が邪魔かもしれないけど、見れないことはないだろうし、ちょうどベンチもあるからさ。そこで見ようぜ」
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