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遅れて着いた様子の子供たちが、見えないから早く向こうに行こうと、焦った様子で走っていくのを聞いたから。
トキタ君は、そんなことまったく気付かずに……たぶん、自分の記憶からなのだろう花火の景色を、ずっと私に言い続けた。その終わりの時まで。
音の振動に言葉のデコレーション。おかげで私の頭には初めて夏の夜が訪れた。それはみんなと同じ夏の夜。
「……ねぇ、トキタ君」
「凄かったな。どうした?」
「なんで花火って、夏の夜なのかしらね。前から思ってたの」
「なんだよ、あはは。神妙な顔するから何かと思いきや、そんなことか」
「トキタ君は、何か知ってるの? 夏にやる由来みたいなの」
「知らないけど、簡単だよ。冬はイルミネーションが綺麗だろ。静かな空気で静かな灯りがある。
夏は花火がイルミネーションなんだよ。賑やかな空気で賑やかな灯りがある。それだけじゃないか?」
私は思わず、クスッと吹き出してしまった。
「ん、なんか変なこと言ったか……?」
「ううん、大丈夫よ別に。ちょっと面白かっただけ」
「面白い? そうかね」
花火がイルミネーションだなんて、そんな発想わたしには無かった。たしかに冬場はイルミネーションも多く見られるし、夏場はそういうのが無い。
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